放電で起動トラブルが直るその根拠について

パソコンを長年使っていますと、突然USB機器を認識しなくなるようなトラブルが起きることもあります。このような突発的なトラブルの多くは、部品を交換することもなく、Windowsをメンテナンスすることもなく、再起動だけですんなりと解決します。
そのような再起動だけですんなりと解決した経験って誰にでもあるかと思いますが、これは部品の誤作動でして、故障ではありません。電源オフだけでリセットされるので、再起動だけで何事もなかったかのように正常に動作するようになります。
このように誤作動は電源オフだけでリセットできるのですが、電源オフだけではリセットされずに誤作動状態を維持してしまうこともあります。
ちなみに、パソコンの電源オフだけでも放電になっていそうですが、実はパソコンの基板には電気が保持されています。パソコンはコンセントから外しても微弱電流と例えましょうか、CMOSというボタン電池を使って時計でしたりBIOSで設定変更した情報を保持しています。*バッテリーのないデスクトップパソコンをコンセントから外しても時計が進んでいるのはボタン電池があるためです。
そしてこの電気が理由で誤作動が続いてしまうこともあり、放電で電気を逃がしてあげて(完全な電源オフを行い)誤作動のない、正常な状態にリセットします。
放電で解決できるのか判断できますか?
ノートパソコンの症状をお伝えしますと、放電で解決できるのか判断できますか?というご質問を受けることもあります。
趣旨としましては、放電のための分解作業が大変で、事前に放電が不要と判断できるなら作業を控えたいというものです。最近のノートパソコンは、バッテリーを外すだけでも分解が必要ですから、不要な作業なら控えたいですよね。
ただ、事前に放電で解決できるかどうかを判断することはできません。切り分け作業をしながら、その解決策が見えてきます。
たとえば、冒頭リンクの”電源を入れても「VAIO」ロゴが出ず”記事で考えますと、メーカーロゴが出ない場合は、Windowsのエラーではありません。
パソコン部品のエラーが原因になりまして、放電で解決できない場合は、部品故障と切り分けできます。放電を試すまではその判断ができず、事前に放電が必要or不要を判断することができません。
もしノートパソコンのバッテリーを外す作業が大変という場合は、コンセントだけ外して、できる限り放置するみたいな、無理に作業を進めるのではなく、できるところまで作業を進めてください。
Windows起動トラブルを放電で直す方法
一般論としまして、コンセントとバッテリー(ノートパソコン)を外すだけも放電作業になります。ただそれだけでは、頑固な汚れのようにひと筋縄ではいかないこともあったりします。ここでは完全な放電をテーマに、私が行う”放電でのパソコン部品リセット方法”を公開しています。
この作業の概要
リセットボタンがあるパソコンは、コンセントを外した状態でリセットボタンをお試しください。それでも状況が改善しない場合は、ボタン電池を外して、メモリを外して、ハードディスク(SSD)を外してください。
放電が完了しましたら、逆再生みたいな感じでハードディスク(SSD)取り付けからスタートし、メモリ、ボタン電池を取り付け、最後にコンセントに接続で完了です。
注意点としましては、パソコン内部の部品を手で触ります。感電しないよう、作業前に電源ケーブルをコンセントから外してください。ノートパソコンはバッテリーも外してください。
それとパソコンによっては分解の難易度が高いものがあり、放電に必要なすべての作業ができない可能性もあります。無理な作業はパソコンを壊してしまう恐れもありまして、無理なくできることのみお試しください。
ここでご紹介するすべての作業にかかる時間の目安は10分です。それではWindows11/Windows10で起動トラブルの起きたパソコンを放電で直していきましょう。
- コンセントから外してください。
- リセットボタンを押してください。
- ボタン電池を外してください。
- メモリを外してください。
- ハードディスク(SSD)を取り外してください。
- 電源ボタンをカチカチ押してしてください。
- ハードディスク(SSD)を取り付けてください。
- メモリを取り付けてください。
- ボタン電池を取り付けてください。
- コンセントに差してご確認ください。
コンセントから外してください。

電源ケーブル/電源アダプタをパソコンから外してください。ノートパソコンはバッテリーも外してください。
Windowsが起動しないトラブルでご相談いただいて、私が確認で電源を入れて何事もなかったかのように起動する(トラブルが起きていない)ケースが多い月ですと5%もあります。当社への移動だけで症状が改善していることから、コンセントから外すだけでも効果は高いと言えます。
もしパソコンの構造上、分解が難しく以下の手順が試せない”コンセントから外すことしかできることがない”みたいな場合は、電源ケーブル/電源アダプタをパソコンから30分以上外してください。コンセントから外すことしかできることがない場合は、1週間でも1か月でも長ければ長いほど良いです。
リセットボタンを押してください。

リセットボタンがある場合は、リセットボタンをカチカチ押した後で、1分程度長押ししてください。
コンセントから外したままの状態でリセットボタンを押してください。リセットボタンを強く押すと壊れてしまう恐れもありまして、優しく押してください。このリセットボタンを試しましたら、電源ケーブルをコンセントに差して改善したかどうかご確認ください。
リセットボタンで改善していない場合は、再び電源ケーブル/電源アダプタをパソコンから外して(ノートパソコンはバッテリーも外してください)、次のステップにお進みください。
リセットボタンのない(この作業のできない)パソコンは、コンセントから外した状態で、次のステップにお進みください。
ボタン電池を外してください。

ボタン電池にアクセスできる場合は、ボタン電池を外してください。
ボタン電池を外しましたら、次のステップにお進みください。*ここでは外すだけでして取り付けは最後に行います。

このようなボタン電池むき出しですと見つけやすいです。もし見つからない場合は無理せずに次のステップをお試しください。
【感電にご注意ください】パソコン内部の部品をさわるときは必ずコンセントから外した状態で作業してください。
メモリを外してください。

メモリにアクセスできる場合は、メモリを外してください。
メモリを外しましたら、次のステップにお進みください。*ここでは外すだけでして取り付けは最後に行います。
ハードディスク(SSD)を取り外してください。

ハードディスク(SSD)にアクセスできる場合は、ハードディスク(SSD)を外してください。
ハードディスク(SSD)を外しましたら、次のステップにお進みください。*ここでは外すだけでして取り付けは最後に行います。
Windows起動中に電源が落ちるトラブルを掃除で直した事例研究
こちらの事例研究では、CPUファン内部のホコリが原因で熱暴走を起こし、Windows起動中に電源が落ちていました。そのような掃除で解決できるWindows起動トラブルもあります。
ここまで分解された放電プラスアルファの作業としまして、エアーダスター缶を使ってエアブロー(掃除)も行ってみてください。
電源ボタンをカチカチ押してしてください。

上記部品を外したままの状態で、電源ボタンをカチカチ押してしてください。
十分に放電が完了していると思いきや、うっすらと電源ボタンが一瞬光るという、頑固な汚れのように電気が残っていることもあります。ちなみに、コンデンサという部品が電気を保持していることもあります。
電源ボタンをカチカチ押して、電気をしぼり抜いてください。
ハードディスク(SSD)を取り付けてください。

ハードディスク(SSD)を外した場合は、ハードディスク(SSD)を取り付けてください。
放電が完了しましたら、ハードディスク(SSD)から取り付け作業をスタートしてください。
メモリを取り付けてください。

メモリを外した場合は、メモリを取り付けてください。
メモリの差し込みがあまいと接触不良になることもあり、奥にあたるまでしっかりと差し込んでください。
増設したメモリがある(改造している)場合は、元のメモリだけ取り付けてください。増設メモリは抜いたままにして状況が改善するかご確認ください。相性問題というトラブルがありまして、これは同じ規格のメモリを使っていても違う製品を使うと誤作動することがあるというものです。
ちなみに、元のメモリを外して、増設したメモリだけを接続するのでも問題ありません。あくまでも相性問題でして、どちらか片方を接続してください。
ボタン電池を取り付けてください。

ボタン電池を外した場合は、ボタン電池を取り付けてください。
ちなみに、ボタン電池を抜き差ししますと、パソコン内部の電気がゼロになります。時計がズレるため初回起動時にエラー表示がでることもありますが問題ありません(時計のエラー表示は電気がゼロになり放電が完了したことの確認になります)。それとBIOSで設定変更した情報は初期値に戻っていますので必要でしたら再度設定変更してください。
コンセントに差してご確認ください。

電源ケーブル(電源アダプタ)をコンセントに差して、改善の有無をご確認ください。
放電で改善している場合は、パソコン部品が今だけ誤作動していたという、一時的なトラブルだったということです。
もし改善しない場合は、Windowsの起動トラブルまたは、パソコン部品の故障がその原因になります。
Windows起動トラブルの放電でよくあるご質問FAQ
Windows起動トラブルが起きて、これから放電を試そうと思っている方からのご質問でしたり、放電を試しながら疑問に思ったことのご質問、放電で直った後のご質問など、よくあるご質問をまとめてみたいと思います。
本当に放電でトラブルが解決しますか?
放電といった簡単な処置で、今起きているWindows起動トラブルが直るとは思えないというご意見を多くお伺いします。
パソコン部品の誤作動が原因でWindowsに起動トラブルが起きている場合は、放電でパソコン部品をリセットするのが解決方法になります。
もちろん、プログラムのエラーでしたり、部品故障が原因でしたら、放電で解決することはありません。その場合は、プログラムのエラーを修復したり、故障部品を交換する必要があります。
あくまでも、原因によって解決方法が決まりまして、どのようなトラブルでも放電で直るのではなく、放電でしか直せないトラブルもあるため放電を試す価値があります。
ちなみに、パソコン修理でご依頼いただいて、Windows起動トラブルが起きていないケースが多い月で5%もあります。当社への移動中に改善していることから、放電で直ったと考えられます。
放電にデメリットはありますか?
電気を抜くだけの話でして、放電を行うことにデメリットはありません。
ただパソコンの形状によってはボタン電池を外すのが大変でしたり、ノートパソコンは分解しないとバッテリーが外せないものがあるなど、間違えて基板に接触してしまい壊してしまう可能性だけは残ります。
無理なくできることをお試しいただければと思います。
どのようなトラブルで放電が必要になりますか?
”この症状ですと放電が必要です”みたいな法則はありません。
あくまでも原因によって解決方法が決まりまして、放電で解決できたなら、パソコン部品の一時的な誤作動が原因だったと切り分けできます。症状では原因がわからないため、切り分けながら原因を探る感じになります。
ちなみに、誤作動している回路によって症状が変わります。たとえば、電源を入れてもメーカーロゴが表示されない、Windowsのクルクルが停止する、ブルースクリーンになるなど、誤作動している回路によって症状が変わります。
コンセントを外すだけでも放電になりますか?
頑固な汚れのようななかなか放電できないケースもありまして、極論としましては、コンセント(電源ケーブル)、バッテリー、ボタン電池、メモリ、ハードディスク(SSD)の抜き差しを行いたいところです。
ただし、パソコン修理でご依頼いただいて、Windows起動トラブルが起きていないケースが多い月で5%もあります。当社への移動中に改善していることから、コンセントを外すだけの放電でも一定数の効果があると判断します。
ちなみに、誤作動を起こしている回路の放電が完了できれば、目的は達成されます。完全な放電が求められている訳ではありません。作業難易度的に難しい場合は、コンセントを外すだけの放電だけでもお試しください。
放電時間はどのくらい予定したほうが良いですか?
コンセントを外すだけでしたら、最低限1日は放置していただきたいと思います。*ノートパソコンはバッテリーも外してください(またはバッテリーの充電が空の状態)。
パソコン修理でご依頼いただいて、Windows起動トラブルが起きていない(移動中の放電で直っている)ケースを考えますと、宅急便は移動に1日かかりますから、それくらいの時間の放置は必要かと思います。
ちなみに、誤作動を起こしている回路の放電が完了できれば、目的は達成されます。完全な放電が求められている訳ではありません。お仕事などで放置できる時間に限りがある場合は、可能な限りできる時間をお試しください。
コンセント(電源ケーブル)、バッテリー、ボタン電池、メモリ、ハードディスク(SSD)の抜き差しを行う場合は、部品を外した段階で放電が完了しております。放置する必要はありません。
放電が完了したことを確認する方法はありますか?
完全に放電されますと、パソコンの時計がリセット(購入日より以前の日時にリセット)されます。放置している最中に確認する方法はありませんが、作業完了時にBIOSで時計を確認していただければ完全な放電ができたかどうか判断できます。
誤作動を起こしている回路の放電が完了できれば、目的は達成されます。完全な放電が求められている訳ではありません。可能な限りできる時間をお試しいただくことのほうが大切ポイントになるかと思います。
ちなみに、コンセント(電源ケーブル)、バッテリー、ボタン電池、メモリ、ハードディスク(SSD)の抜き差しを行う場合は、部品を外した段階で放電が完了しております。組み立てましたら、BIOSで時計を確認してみてください。
メモリを抜き差しする必要はありますか?
頑固な汚れのようななかなか放電できないケースもありまして、メモリ、ハードディスク(SSD)の抜き差しも行わないと、状況が改善しないことも実際にあります。そのため、無理そうでなければ、メモリの抜き差しも行っていただきたいところです。
ちなみに、最低限の放電ということで考えますと、コンセントを外すこと、ノートパソコンでしたらバッテリーも外すこと(バッテリーを空にするのでも有りです)です。無理がなければ、ボタン電池、メモリ、ハードディスク(SSD)の抜き差しもトライしたいところです。
放電が必要なトラブルが再発することもありますか?
放電で今回はWindows起動トラブルが直ったものの、また再び同じようなトラブルが起きないか心配ということもあるかと思います。
私の経験上、また放電が必要なトラブルが起きるのは珍しいと思います。定期的に放電が必要みたいな特徴をもったパソコンを見たことがありません。
ただ予防ができない関係で、再発する可能性だけは残ります。そのときはまた放電をお試しください。
放電が必要なトラブルを予防することはできますか?
ボタン電池でしたりコンデンサといった、いまのパソコン部品の仕組みですと、放電が必要なトラブルを予防することまではできません。*起きるときは起きてしまいます。
ただ、コンセントから外さなければ、事前にボタン電池とバッテリーを外して使っていても支障はありません。もしWindows起動トラブルが再発した時は、コンセントを外すだけで、コンセント(電源ケーブル)、バッテリー、ボタン電池を外した効果があります。
かなりのレアケースになりますが、たびたび放電が必要などで分解するのが大変という場合は、予防まではできませんが、事前にボタン電池とバッテリーを外しておいて、コンセントを外すだけで必要最低限の放電ができるようにしておくのもありかと思います。
毎日放電していたほうが良いですか?
予防ができないなら、毎日放電していればトラブルが起きない?というご質問もあります。ただ放電が必要なタイミングはめったにないのが通常でして、そこまでシビアに考える必要はないかと思います。
ちなみに、放電しますとBIOS情報がリセットされます。パソコン起動時に周辺機器のチェックが入りますから(メモリやハードディスクの情報など)、起動時間が長くなります。パソコンによっては、電源投入時に「F1」キーを押したり、時刻の入力が求められる場合もありまして手間がかかるケースもかかります。
たびたび放電が必要みたいなレアケースは除きますが、放電を気にせずに普通にお使いいただくのが一番なのかなと思います。